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雑誌低迷に見るコンテンツの行く先

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出版不況未だに

いまだ先行きの見えない不況に晒されている出版業界。今年に入って暗いニュースが立て続けに飛び込んできました。

雑誌「小悪魔ageha」など出版 インフォレスト株式会社
事業停止、債権債務の調査を弁護士に一任 負債30億円


「egg」休刊へ ギャル雑誌の相次ぐ休刊に衝撃走る

インフォレストは上記の雑誌販売を軸に通販事業を含めて、最盛期の2009年には約74億円の売上を計上していました。全出版社の平均売上高が約5億円程度だと考えると、少なくとも中堅以上、全国の出版社3,000社のうちトップ数十社に入る規模だったと考えられます。

同社からは、アゲ嬢(死語?)という言葉とともにムーブメントを引き起こした『小悪魔ageha』が出版されており、こちらも最盛期には40万部を発行したと言われています。同社の広告募集ページでは公称30万部と書かれており、ほかの雑誌も20万、10万部クラスが並んでいますが、資金繰りが難しくなったということなら、実情はやはり相当少なかったのだろうと推測できます。

一方ギャル雑誌の代名詞にまでなった『egg』。正式なリリースが出ていないので(2014年5月12日現在)理由は定かではありませんが、販売部数の減少が主な理由であることは想像に難くありません(一時は公称50万部と言われていたそうです!)。

今回は知名度のある雑誌の休刊や会社の倒産が重なったためセンセーショナルに報道されていますが、雑誌媒体の休刊・廃刊は今に始まったことではもちろんありません。皆さんも一度は読んだことがあるはずの、小学館の学年別雑誌(小学六年生とかいうあれです)の一部も既に休刊となっていますし、数え上げたらきりがないほどの雑誌が休刊・廃刊に追い込まれています。

こうした背景には、興味・関心の多様化、インターネットの普及による情報の多角化や入手の容易性向上、景気の後退など様々な理由が考えられます。世間から消えていく雑誌と生き残る雑誌。両者にはどのような違いがあるのでしょうか?

収益特性から雑誌を大まかに分類してみる

雑誌はファッション誌のように広告収入で成立させたり、漫画雑誌のように単行本のPRツールとして発刊したりします。そのため広告費を抜いた販売売上だけの原価率はかなり高いようです。そうでなければあのボリュームの雑誌を1,000円しない金額では売れないですよね。

コンテンツが良ければ広告費は増える。そうなるとスポンサーの力が強くなる。そしてコンテンツがスポンサーの影響を受けて読者のニーズとのギャップが生まれる可能性がある。この辺が雑誌業界のジレンマなのでしょうね。私自身は出版社にいたこともあり、紙にしろwebにしろ、読者の役に立ち楽しめる情報を届けたいと強く考えていますが、景気やコスト・収益構造の問題がそれを難しくしています。

こうした背景の中で生き残る雑誌はどのようなものかというと、
①コンテンツ自体の価値によって広告がついてくる(あるいは広告をうまくマネジメントしている)雑誌
②広告費に頼らないマネタイズができている雑誌
③PRと腹を括っている雑誌

なのではないかと考えます。

①は大手出版社などのビジネス・ファッション・カルチャー誌で、比較的マスが対象となっているものが挙げられます。景気の変動やweb広告費の増加によるリスクはありますが、多くはweb媒体への転換やクロスメディア戦略によってその価値を維持しています。

②はニッチながら固定的な読者がついており、価格も高めに設定できるものです(つまりコンテンツ自体が売れている)。例としては趣味やスポーツなどの専門誌で、「熱狂的」な読者層を有しています。リスクとしては、同じカテゴリーの雑誌のうち、No.1以外が淘汰されてしまう可能性があるということです。

そして③はマンガ雑誌や、ファッションやカルチャーを手がかりに自社商品の物販(EC含む)を支えるものが代表格と言えます。そもそもカタログ雑誌として出版されているものもありますね。また直接的に収益を得るのではなく、自社のブランディングのためのPR出版と呼ばれる書籍形態は多くの実例があります。

さて事業停止となったインフォレストですが、同社が発行していた雑誌の版権のいくつかは譲渡先が見つかったようです。生き残ったということは、上記3つのうちいずれかの価値が認められてのことだと考えます。


Thrillist

リアルな言葉で男性読者を虜にするThrillist。元はメールマガジンだったがECサイトを買収して急成長を遂げた


非出版社の出版事業参入が加速?

インフォレスト発行の“女性のためのリアル・フォトライフマガジン”『女子カメラ』と“さまざまなクリエイターが最近買ったいろんなモノを紹介する物欲触発マガジン”『i bought(アイボウト)』はミツバチワークスという会社が譲り受けたそうです。ミツバチワークスは「“webサービスの企画・制作・開発を行う”」IT企業で、代表的なサービスに『Decolog』という国内最大のガールズ・ブログサービスがあります。

『女子カメラ』の販売部数は公称で6万5千部、『i bought』はさらに少ないと思われますが、ミツバチワークスの狙いはまさに③(PR)ではないかと考えられます。あわよくば雑誌単体で利益を出したいところでしょうが、一番の狙いはミツバチワークスのブランディングと、webサービスと連携した収益だろうと考えます。この考えは、企業のカルチャーやコンテクストを伝えた上で自社のブランディングや顧客の醸成を行う「コンテンツマーケティング」と近いようにも思えます。

テレビや雑誌などのマスメディアの衰退、そしてオウンドメディアの重要性が説かれるようになって久しい昨今、出版だけのための出版社というのは存続すら危険な状態であるのです。資本のある出版社は自身で多角化を図るでしょうし、代わりにミツバチワークスのように、伝統的な出版社ではない企業が雑誌(コンテンツ)を発行することが増えるかもしれません

例えば、ユニクロやZOZOTOWNのようなファッションECの大手がファッション誌を買収したり、自動車メーカーがカルチャー誌を販売するようになったら面白いですね。これをコンテンツマーケティングとして用いれば、単に自社の宣伝をする媒体としての役割ではなく、コンテンツ自体の価値を追求する方向で良質なコンテンツが生まれるかもしれません。また広告主に縛られるといったジレンマからも解放されるかもしれません(例に出したユニクロやZOZOTOWNといった発行元が、読者の求める情報を提供することが前提ですが)。


Red Bulletin

こちらはエナジードリンクのレッドブルが発行する無料のオンライン雑誌『Red Bulletin』。発行するRED BULL MEDIA HOUSEはこのように述べている。「我々は『魅了する』ということの使命を帯びている。我々は自身のメディアブランドだけでなく、第三者のメディアパートナーと協力し、最高品質のメディアアセットを創り出し、広めるために絶えず努力するものである」

出版不況は相変わらずですが、情報を求めている人の数は変わらないかむしろ増えていくのではないでしょうか。これからのメディアの形から目が離せない一方、そうした人々の期待に応えられる編集力を磨き上げていきたいですね。



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