コンテンツマーケティング研究所

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「マーケティングは素人です」受託開発のBtoB企業が自社サービスを軌道に乗せられたワケ

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受託開発のBtoB企業が自社サービスを軌道に乗せられたワケ

ヴェルク株式会社は、2010年12月に設立された受託開発を事業とするBtoB企業です。「とりあえずやってみよう」から始まったコンテンツマーケティング。この取り組みの中で得た成果や課題そして勘所を、いくつかの事例とともにお伺いしました。

受託開発しかやったことがない自分たちができるマーケティングは何か?

最初の1〜2年は、ほとんどこれまでの繋がりで仕事のご依頼を頂いていました。もちろんそれはありがたいことなのですが、会社として継続していくためには、繋がりに依存しない新規のお客さまの獲得が必要です。

そこで、イベントのスポンサーをやってみたり、営業代行の会社さんにお願いしたりしましたが、大きな成果はありませんでした。マーケティング・プロモーションの難しさを感じていた中で、コンテンツマーケティングに取り組むきっかけとなったのは、自社サービスでした。

ヴェルクという会社は受託開発の会社ですが、一方で、設立当初から受託開発と自社サービスの両立を目指しています。しかし、自分自身を含め創業メンバー全員が受託開発の経験しかなく、いきなり自社サービスを軌道に乗せることは難しいと考えていました。特にマーケティング・プロモーションについては何をやったら良いのか全く分からない状況でした。

設立1〜2年目に、自社開発としては主にiPhoneアプリを手がけ、見よう見まねで色々とプロモーションをやってみました。大きくヒットしたものはないですが、大きく外しもせず、「自社開発をやる」「自分たちでプロモーションをやる」という経験値は積むことができました。

この経験を元に、3年目にスマホアプリCMS「Patto」を開発し、これをきっかけに、本格的にコンテンツマーケティングというものを考えるようになっていきます。

Pattoにおけるコンテンツマーケティングの取り組みと課題

コンテンツマーケティングについては全くの素人でしたので、浅い知識で判断しないようにしました。そのため、サポートをお願いしていた人の言われたことを、徹底的にその通りやってみることから始めました。

もちろん全ての施策がうまくいくわけではないですし、合う合わない、好き嫌いもあります。ただ、自分で判断するのはきちんと自分で理解してからにして、まずは言われたことをやるようにしようというスタンスで進めました。

コンテンツマーケティングの取り組みのポイント

  • 製品サイトのページで、「会社から"アプリ企画考えて"と言われた担当者」を想定読者として「スマホアプリをビジネスに活用する」というテーマで記事を書く
  • Pattoの営業コンテンツではなく「スマホアプリに対する考え」を中心に書く:例えば、アプリが向いていないケースなどもはっきりと書きました。
  • ある程度のコンテンツ量になるまでは、1〜2週間に1記事くらいのペースで書く:コンテンツ量がないと見栄えがしないため急いだというのもあるのですが、そもそも「記事を書くこと」「書き続けること」に慣れていなかったので、そのトレーニングも兼ねて、集中的に書いていました。
  • 量よりも質:簡単に書けるような内容や、他のサイトにもあるようなコンテンツではなく、出来る限り「考えやコンセプト」を中心に書くことで、「共感」を大事にしました。

コンテンツマーケティングならではの成果

大当たりしているサービスというわけではないですが、継続的にアクセスもあり、「コンセプトに共感して」問い合わせを頂くケースも多く、一定の成果を残せているのではないかなと思います。

特に「コンセプトに共感した」というケースは、その時点で、通常の問い合わせに比べて非常に確度が高い見込み客となりますので、単なる問い合わせの獲得だけでなく、営業面でも非常にプラスになりました。

今後の取り組みにあたっての課題

コンテンツを書き続けることが難しく、更新頻度が大幅に落ちてしまう点が挙げられます。コンテンツを書くことが本業でない以上、本業の受託開発が忙しくなれば、やはり更新頻度が落ちてしまいます

またコンテンツの内容も、ニュースに絡めたものなどは書きやすいのですが、コンセプトや考えなどはある程度書ききってしまうと、同じペースで書き続けていくことが難しいと感じています。

インバウンドのための企業ブログとしての取り組み

ヴェルク - IT起業の記録」はプロモーションのために書いていたわけではありませんでした。しかし結果的に、ヴェルクという会社を知ってもらうきっかけとなりました。初期の頃は色々な内容を書いていたのですが、ここ1〜2年は、「受託開発と自社サービスの両立への取り組み」など、「受託開発」をテーマにしたものを中心に書いています。

更新頻度は非常に低く、2〜3ヶ月以上間が開いてしまうこともよくあるのですが、とにかく1回の記事には全力を注いでいます。また記事の内容も、頭で考えたことではなく、「自分たちで取り組んでいること」やそれによる成果・失敗など、リアルな経験をメインで書いています。

あまり抽象化してしまうと「表面的には分かるけれども、実際どうなの?」ということになってしまうので、できるだけ生々しく書くようにしています。「よく失敗や課題まで書けるね」とか「結構思い切ったこと書いてるよね」と言われることが多いのですが、そこにこそ読者にとって勉強になるポイントがあると思うので、変に格好つけず、積極的に書くようにしています。

そういう書き方に変わった後から、ブログにはてブがたくさん付くようになるなど、ソーシャルでの反応が劇的に増えました。その結果ブログを見て連絡をくださる方や、初めてお会いしたときに「ブログ読んでます」と言っていただいたりと、ヴェルクという会社を知ってもらう機会がぐっと増えたようですので、コンテンツの質にこだわって書くというのは非常に重要なんだと肌で感じています。

boardでの取り組み:競合との差別化のためのコンテンツマーケティング戦略

昨年夏に、クラウド型バックオフィス業務・経営管理システム「board」をリリースしました。

これは見積書・請求書などの各種書類作成だけでなく、受託ビジネスに最適化させたシステムになっています。業務へのフィット感を高めて業務効率化を図り、また経営者自身が開発したことで、経営者視点で本当に見たい数字を見られるようにしています。

「業務」「経営管理」という側面をかなり強化しているため、他の見積書・請求書作成サービスとは目指している方向が異なります。しかしユーザが比較する場合は競合と見られがちなのと、競合の多くが資金調達をして積極的に広告を打っていることもあり、同じ土俵で戦えず、マーケティング戦略においても明確な差別化が必要でした。

大量の広告を打てない以上、インバウンドの仕組みを確立するコンテンツマーケティングは欠かせないわけですが、ターゲットがベンチャー経営者ということもあり、Pattoに比べてコンテンツ作りの難しさを感じていました。最初はboardのコンセプトや狙いを伝えるための記事を書いていたのですが、当然それだけでは継続して書くことができないため、特徴のある取り組みをする必要がありました。

そこで、「経営者(今のところ自分)が、会社を成長させる上で自分の専門分野以外のプロフェッショナルに教えてもらう」というスタンスで、様々な分野の方々にインタビューする企画を軸にした「The board Media」をスタートしました。インタビューというよりは、教えてもらっているやり取りをコンテンツにしたイメージです。

この手のサービスで普通にコンテンツマーケティングを考えると、例えば、弁護士さん・税理士さんなどの士業の方に、経営者をターゲットにしたコンテンツを書いてもらうことなどがあるかと思います。ただ、最近だと士業の方自身が発信しているケースもありますし、そういうコンテンツが非常に増えてきている印象があります。

そこで差別化のための戦略として、「読者が自分自身を投影できるコンテンツにしよう」というスタンスで、経営者(自分)が、自分の立場を軸に質問をしていく、という形式でコンテンツを作っています。いわゆる講義形式ではなく、マンツーマン形式のイメージです。

この企画はまだ始めたばかりですが、反応は上々ですし、何よりも読んでくれた方から「すごく自分のシチュエーションに重ね合わせやすかった」という反応をいただけたのが良かったと思っています。

まとめ:受託開発におけるコンテンツマーケティングの勘所

受託開発だけをやっていたとしたら、コンテンツマーケティングは非常にハードルが高い挑戦でした。

それは受託開発というものが、比較的複雑な料金体系で個別性が高いことにあるかもしれません。「信頼」や「実績」が発注の基準になる業界において、他社との差別化を図るコンテンツをどうやって作り、集客すればよいか分からなかったのです。

しかし、新規の仕事を獲得するためには、会社を知ってもらう機会を作る必要がありますし、興味を持って頂いた方にはどういう会社か伝える必要があります。

そこで、受託開発を直接的にコンテンツマーケティングと絡めるのではなく、自社のサービスを作って、そこを起点にコンテンツを発信していくことで、会社を知ってもらうことを目指しました。結果的にサービス自体にも集客できているだけでなく、そこから受託開発に繋がることも多く、インバウンドで受託開発の受注もできるようになってきました。

ヴェルクは、マーケティング担当のメンバーがいるわけではないので、現在でも受託開発の傍ら、時間を見つけて記事を書いています。

そのため、「毎日書き続ける」どころか、ある程度の頻繁に記事を更新すること自体が難しく、1つの記事の内容で勝負する必要があります。しかし、それが結果的に自分たちには合っていて、またそのコンテンツが読者にとって必要なものであれば、量が少なくても十分効果を出せると感じています。こうしたやり方が、マーケティング担当のメンバーがいない場合の一つのやり方ではないかと思います。

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専任のマーケティング担当者がいない中、自分たちをいかに見込み顧客に知ってもらうか―。

受託開発という、オーダーメイドサービスを提供するヴェルクが取った方法は、自社サービスを軸に集客し、サービス提供会社としての「信頼」を醸成して受託開発に結び付けるコンテンツ施策でした。

「受託開発と自社サービス開発の両立」を目指す同社が行きついた方法は、自社でコンテンツマーケティングを回すための参考になるのではないでしょうか。

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ヴェルク株式会社

田向 祐介氏
ヴェルク(株)代表。エンジニア・マネージャーとして現場のプロジェクトに従事しつつ、経営者として「受託開発と自社サービス開発の両立」に取り組んでいる。
自身の経営者としての経験・ノウハウを形にした、クラウド型バックオフィス業務・経営管理システム「board」をリリースし、多くのベンチャー企業に支持されている。
http://www.velc.co.jp/


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